光と自然が紡ぐ

建築写真を見た瞬間、思わず息をのむ美しさ。

「住吉山手の家」は、その言葉に尽きます。竹原義二の住宅建築の中でも、光と自然、そして住まう人の動きをここまで鮮明に描き出した作品は稀です。

建築概要

• 所在地:兵庫県神戸市

• 構造:地下1階・地上2階

• 延床面積:188.27㎡

• 建築面積:94.37㎡

• 敷地面積:241.48㎡

• 掲載:竹原義二「住宅建築」

植栽とコンクリートの対話

まず印象的なのは、建物の無機質なコンクリートと周囲の植栽が織りなす絶妙な調和です。

コンクリートの硬質感は、木や緑によって柔らかく包まれ、自然との一体感を生み出しています。

建築物単体で見るのではなく、環境との関係性を意識した設計。植栽は単なる装飾ではなく、光を透過し、影を落とし、空間の表情を時間ごとに変化させるための仕掛けとしても機能しています。

光の演出― 日常を彩る動線

この住宅の光の扱いは、まさに見事です。

窓の位置や大きさ、天井高や吹抜けの配置を通して、住む人の視線や身体の動きに自然なリズムを作り出しているのがわかります。

朝の光は玄関や廊下に柔らかく差し込み、昼にはLDKや居室を温かく包み込む。夕方になると、傾く光が床や壁を染め、住む人に今日という日を静かに知らせます。

光の通り道を意図的に設計することで、ただの生活空間が、物語が紡がれる舞台のような体験をもたらしているのです。

平面図・断面図からの読み解く

図面を眺めると、家族の動線や生活のリズムが自然に見えてきます。

廊下や階段、居室と水回りの配置は無理なく連結され、動きながらも視線の抜けや空間の広がりが意識されています。

断面図を重ねてみると、天井の高さや吹抜けの設け方が、光の流れと視線の動きに直結していることが分かります。

どこからでも物語が始まりそうな空間構成。写真を眺めるだけで、人がどのように移動し、話し、生活するかが手に取るように見えてくるのです。

建築家としての学び― 空間に命を吹き込む

「住吉山手の家」は、単なる住宅ではありません。

• 光と影の微妙な関係を設計に取り込むこと

• 自然と建築を対話させ、環境と一体化すること

• 日常の動線を読み取り、住む人の体験をデザインすること

これらの要素が統合され、住宅自体が一つの生きた舞台となっています。

竹原義二の住宅は、素材やディテールの美しさだけでなく、光や自然との対話、住む人の物語まで読み解ける建築として、私たちに多くの学びを与えてくれるのです。

まとめ― 光と物語を紡ぐ住宅

「住吉山手の家」は、見る者の目を奪う美しさだけでなく、日常の中に光と自然のリズムを取り込み、生活を豊かに彩る住宅です。

建築家を志す者にとって、光と素材、環境との対話を学ぶ上で、これ以上ない教材となるでしょう。

ページをめくるたび、写真一枚一枚が「ここで人は何を感じ、どのように動くのか」という問いを投げかけてきます。

この住宅は、光と自然、そして住む人の物語を紡ぐ 生きた建築の教科書 なのです。

白雉和京(しらきじ わきょう)

建築学生/建築学科2回生

https://www.instagram.com/sirakiji_wakyo_designs