都市の中の洗練と秩序

東京都港区北青山。ここは単なるオフィス街ではない。アパレルショップやデザインブランドが軒を連ね、街全体が日本の経済と流行の中心地として機能している。そんな地にそびえるのが 伊藤忠商事東京本社ビル だ。

建築概要

• 所在地:東京都港区北青山2-5-1

• 設計:日建設計

• 設計:間組

• 竣工年:1980年

• 構造:鉄骨造 一部鉄骨鉄筋コンクリート造、および鉄筋コンクリート造

• 掲載:新建築 1981年  vol.56-3

面積

• 敷地面積:19,480㎡

• 建築面積:7,550㎡

• 延床面積:112,860㎡

• 地域地区:商業地域 防火地域

• 規模:地下4階、地上22階、塔屋1階

主な外部仕上げ

屋根…アスファルト防水、押さえコンクリート木ゴテ仕上げ、耐候性鋼板大型瓦棒葺き

壁…花崗岩打込み、プレキャストコンクリート、煉瓦タイル

土地の特性を読む

敷地は国道246号線に面し、敷地面積19,480㎡、延床面積112,860㎡と圧倒的なスケールを誇る。

周囲には高級ブランドショップやデザイン事務所が密集し、街の雰囲気は洗練されている。

こうした環境の中で、外観に過剰な遊びを施すことは容易ではない。そのため、このビルの魅力は 内装や空間構成でどのように「都市の格」を表現するか に集約されている。

平面図から読み解く

1階の玄関を抜けると、広大な玄関ホールが待ち受ける。

平面図上ではわかりにくいが、上階からの光庭を通して降り注ぐ自然光が、空間を柔らかく照らす。フィーレンデールトラスを経由した光は、直線的なオフィス空間に対し 空間のリズムと人間的な柔らかさ を与えている。

玄関ホール両端の階段は地下へと続き、堅牢な作りが訪問者に安心感と格式を伝える。

受付脇の喫茶コーナーやロビーも、単なる機能空間ではなく、訪問者に余裕ある時間を提供するための仕掛けとして計画されている。

窓の開口部もまた巧みに設計され、自然光を取り込みながら、街の風景とのつながりを演出している。

断面図から読み解く

断面図を見ると、光庭を中心にした縦方向の連続性が印象的だ。

中層階は少し絞り、低層階の玄関ホールには空間を最大限に確保。

これにより、光庭からの柔らかな光が全フロアに届き、電灯に頼らずとも自然光を取り入れやすい設計となっている。

単なるオフィス効率を超え、人が働く環境としての快適性と視覚的印象に配慮された構造である。

この建築の核心

総合商社のオフィスは、緊密な縦横のコミュニケーションが不可欠である。

このビルは、社員の動線や来客動線を自然に統合し、業務効率を高める機能性を持ちながら、都市の顔としての格式も兼ね備えている。

玄関ホールの設計に込められたこだわりは、毎日訪れる国内外の来客に「安心と信頼」を伝えるための演出でもある。

単に大規模で効率的なオフィスビルではなく、都市空間における企業の存在感と信頼性を体現した建築

それこそが、この伊藤忠商事本社ビルの最大の魅力である。

白雉和京(しらきじ わきょう)

建築学生/建築学科2回生

https://www.instagram.com/sirakiji_wakyo_designs