住所…愛媛県松山市大街道3-2-27
和モダンに潜む“静かな緊張”と食体験の関係
愛媛・松山の中心、穏やかな街並みに溶け込むように佇む鯛めし屋。
その空間に足を踏み入れた瞬間、まず感じるのは和モダンの雰囲気だ。
この空間の魅力は、明確な配色のルールにある。木材の持つ柔らかさと、黒の持つ緊張感。
その対比が、丁度よく配置されている。
例えば
・机は木、椅子は黒
・床はフローリング、壁は黒
・棚板は木、背面は黒
・柱は木、照明器具は黒
こうした反復によって、空間全体にリズムが生まれている。
木だけでは優しくなりすぎる。
黒だけでは重くなりすぎる。
その中間を、極めて繊細に保っている点に、この空間の成熟度を感じる。
和の空間が本来持つのは、落ち着きや余白である。
そこに黒という要素が加わることで、空間にメリハリが生まれる。
輪郭があるからこそ、視線は迷わず、人の意識は自然と一点に集約されていく。
その結果として、食事という行為に対してより深く集中できる空間が成立している。
一方で、建築的視点から見ると、ひとつ惜しい点も感じられる。
それは、カウンターに設けられた棚の存在である。
この棚によって、キッチンの様子が遮られてしまっている。
鯛めしという料理は、提供までに時間を要する。
だからこそ、その過程は
火の扱い、手の動き、仕上がっていく様子を体験として見せる価値がある。
料理を待つ時間を、単なる待機ではなく、期待を高める時間へと昇華できたはずだ。
視線の抜けをどう設計するか。
それによって、飲食空間の質は大きく変わる。
白雉和京(しらきじ わきょう)
建築学生/建築学科3回生