世界でも稀有なアール・デコ建築

昭和8年。

一つの邸宅が竣工した。

それが、朝香宮鳩彦王の邸宅として建てられた旧朝香宮邸である。

現在は東京都庭園美術館として一般公開されているが、その最大の魅力は「空間そのものが芸術作品」である点にある。

アール・デコ建築と聞けば、幾何学的装飾が外観を彩る姿を想像するかもしれない。

しかしこの邸宅は違う。

外観は極めて端正で、装飾はほとんど排除されている。

水平ラインを基調とした静謐な佇まい。

だが一歩内部へ足を踏み入れた瞬間、その印象は一変する。

建築の魅力は、外観ではなく、内装のディテールに凝縮されているのだ。

ルネ・ラリック

玄関正面のガラス・レリーフ扉を手掛けたのは、

フランスのガラス工芸家であるルネ・ラリック

翼を広げた四人の女性像。

その姿は優雅でありながら、どこか緊張感を帯びている。

注目すべきは翼の形状だ。

鋭角な三角形が放射状に広がる構成。

曲線の優美さと、幾何学の鋭さ。

この対比こそ、アール・デコの核心である。

単なる装飾ではない。

近代という時代が持つ「速度」と「未来志向」が、

形態として表現されているように感じる。

大広間のシャンデリアもルネ・ラリック

作品名は《ブラレスト》。

ここでも鋭角的な三角形のモチーフが連続する。

玄関のレリーフとの呼応。

空間全体に通底する幾何学的統一感。

装飾は孤立して存在するのではなく、

建築全体の思想として編み込まれている。

アンリ・ラパン

大広間の設計は、フランス人デザイナーであるアンリ・ラパン

外国産大理石による重厚な暖炉。

その背後に広がる鏡面。

空間は正方形格子を基調とし、

天井はドーム状に凹ませ、内部に電球を仕込んでいる。

白熱球が等間隔に並ぶことで生まれるリズム。

光が反復し、奥へ奥へと視線を導く。

「繰り返しの美学」。

それは単なるパターンではなく、

秩序によって生まれる精神的高揚である。

整然とした連続が、人の心を高揚させる。

大食堂には、さらに複数のデザイナーが関わる。

イヴァン・レオン・ブランショ

壁面レリーフを手掛けた。

マックス・アングラン

超モダンなガラス扉

このことから分かるが、東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)は外観の無駄な装飾を排除したことで、内装のデザインさを際立たせ、より繊細な作りを朝香宮鳩彦王(私たち)に体験させることができるように設計されてると思う。

白雉和京(しらきじ わきょう)

建築学生/建築学科2回生

https://www.instagram.com/sirakiji_wakyo_designs