魅せる鎌倉仕上げ

建築概要

所在…神奈川県横浜市栄区

設計…早見プラザ(越智牧子)

竣工年…1987年

構造…RC壁式構造+木造地上3階建

掲載雑誌・号数…住宅建築 1996-10

面積

敷地面積…250.32㎡

建築面積…94.71㎡

延床面積…146.57㎡

地域地区…第一種住居専用地域

この住宅を前にして、まず心を奪われるのはやはり真壁造りの佇まいである。

「渋塗り下見」という題名が示す通り、外装は単なる仕上げではなく、住まいの人格そのものを形づくっている。鎌倉仕上げの質感は、光の角度によって陰影を深め、時間の流れとともに味わいを増していく。派手さはない。が、確かに存在感を放つ。

全体の室内構成はゆったりとしている。近年の効率優先の間取りとは対照的に、空間に“余白”がある。リビングから望む庭は、まるで一幅の絵のようだ。大きく開かれた開口部を通して、内と外が緩やかにつながる。庭は鑑賞物ではなく、生活の延長として溶け込んでいる 

そして断面図に目を移すと、明らかな違和感が現れる。

屋根の傾斜が左右で分かれているのだ。

通常であれば、建物の中央を最高高さとし、左右対称に同一勾配で屋根を掛けるのが合理的である。構造的にも納まりが良く、説明もしやすい。しかしこの住宅はそれを選ばない。

なぜか。

敷地は道路から距離があり、建物高さも約6.5m程度。高さ制限や斜線制限に追い込まれた結果とは考えにくい。となれば、これは明確な意匠的選択である。

左右非対称の断面は、内部空間に微妙な緊張感を生む。天井高さの差は、視線の抜けや光の入り方を変化させる。片側は落ち着き、もう片側は伸びやかに。屋根形状の違いが、そのまま空間の質の違いへと転化している可能性がある。

さらに想像を巡らせるならば、庭との関係性も鍵だろう。どちらの傾斜が庭側に向いているのか。高く持ち上げられた側は、光を多く取り込むためか。それとも、あえて低く抑え、包まれるような空間をつくるためか。

写真資料や設計者のコメントが十分でないため、断定的な結論には至らない。

だが、それこそが建築を読み解く醍醐味でもある。

外装の質感、余白ある平面、そして左右非対称の断面。

単純に見えて、決して単純ではない。

白雉和京(しらきじ わきょう)

建築学生/建築学科2回生

https://www.instagram.com/sirakiji_wakyo_designs