建築概要
所在…千葉県船橋市
設計…黒沢隆研究室(岩川卓也)
竣工年…1995年
構造…RC壁式構造+木造地上3階建
掲載雑誌・号数…住宅建築 1996-10
面積
敷地面積…176.36㎡
建築面積…87.76㎡
延床面積…1,636.2㎡
地域地区…第一種住居専用地域、法22条指定地域
まで数多くの住宅を読み解いてきた中で、ひとつの明確な違和感として立ち現れたのが、1階にすべての個室(寝室)をまとめている構成である。
一般的な住宅では、生活空間を1階に、寝室を2階に配置する計画が多い。来客対応やプライバシーの確保、動線の合理性を考慮すれば、それは自然な選択とも言える。だがこの住宅は、その“常識”を反転させている。
1階に寝室を集約するということは、生活の拠点をあえて上階へ持ち上げるという意思表示でもある。朝起きて、階段を上がり、光のある場所へ向かう。夜は活動の場から静寂の場へと降りていく。
この構成が可能になっているのは、やはり敷地のゆとりが大きい。十分な敷地面積があるからこそ、1階に複数の寝室を無理なく配置できる。都市の狭小住宅では成立しにくい贅沢な平面計画である。
さらに興味深いのは、1階が“休息の層”として機能している点だ。地面に近い位置に寝室を置くことで、外気や庭との距離が近くなり、包まれるような落ち着きが生まれる。特に夏場や冬場の温熱環境を考えても、地面に近い階は比較的安定しやすいと言える。
つまりこの住宅は、
下を“静”、上を“動”とする二層構成を明確に打ち出している。
生活と休息を水平ではなく、垂直に分節する。
それは単なる珍しさではなく、空間体験を豊かにする戦略でもある。
これまで見てきた住宅とは異なる配置計画は、違和感と同時に新鮮さをもたらす。常識を疑い、敷地条件を最大限に活かすことで、住宅はまだまだ多様な可能性を秘めているのだと実感させられる構成である。
白雉和京(しらきじ わきょう)
建築学生/建築学科2回生