ーバンガロー風外観 幾何学装飾の内観ー
北海道・小樽といえば、港町として発展した商業都市である。
明治から大正にかけて金融や貿易が集まり、数多くの富豪たちがこの街に邸宅を構えた。
その一つが、小樽に残る名邸 和光荘 である。
この邸宅の施主は、商業によって財を築いた実業家
野口喜一郎
興味深いことに、この建物は単に依頼して建てられた住宅ではない。
施主自身が基本設計を行った建築なのである。
建築主が設計思想に深く関わることで、この邸宅は極めて個性的な空間となった。
外観は意外なほど落ち着いた印象を与える。
全体は木造のバンガロー風の佇まいで、豪邸というよりもどこか山荘のような親しみやすさを感じさせる。
過度な装飾を避けたシンプルな外観は、周囲の自然環境とも調和している。
しかし、この穏やかな外観は、建物の内部に足を踏み入れた瞬間に大きく印象を変える。
室内に入ると、空間の印象は一転する。
床にはモザイクタイルが敷かれ、階段の装飾には大胆な幾何学模様が施されている。
さらに印象的なのが、二羽のツバメを描いたステンドグラスである。
光を受けることで、色彩が室内に柔らかく広がる。
建具、床、装飾、ガラス。
邸宅の至る所に幾何学的なモチーフが用いられており、空間全体が統一されたデザインで構成されている。
このような幾何学装飾の多用は、当時世界的に広がっていた装飾芸術の流れとも重なって見える。
この邸宅の最大の魅力は、施主自身が基本設計を行っている点にある。
つまりこの建築は、建築家の作品というよりも、
施主の美意識そのものが形になった空間といえる。
細部の装飾まで一貫した幾何学デザインを見ると、施主が強いこだわりを持っていたことは想像に難くない。
建築家が設計する住宅とはまた異なる、個人の思想が色濃く反映された建築である。
白雉和京(しらきじ わきょう)
建築学生/建築学科2回生