渋沢栄一の喜寿記念館

渋沢栄一といえば、現在の日本銀行券一万円札の肖像として知られる、日本近代経済を代表する実業家である。

数多くの企業や社会事業の設立に関わり、日本の近代産業の礎を築いた人物だ。

その渋沢栄一が 77歳(喜寿) を迎えたことを記念して建てられた建築が「誠之堂」である。

関係企業や人々の寄付によって建設されたこの建物は、栄一への敬意と祝意を込めた記念建築として誕生した。

誠之堂という名称は、儒教の四書の一つである、中庸の一節から引用された言葉であり、名前は渋沢栄一本人によって名付けられている。

」を重んじる思想は、彼の経営哲学にも深く通じていると言えるだろう。

建築の外観でまず目を引くのは、スレート葺きの大きく反り上がった屋根である。

その柔らかな曲線は、どこか田舎家のような素朴な雰囲気を感じさせ、この建物の特徴である 田舎家風建築の趣とよく調和している。

建物の規模は約30坪ほどと決して大きくはないが、むしろその親しみやすさが、この建築の魅力を一層引き立てている。

外壁にはフランス積みの煉瓦が用いられており、赤や褐色など様々な色調のレンガが織りなす表情豊かな壁面が見られる。

整然とした積み方の中にも微妙な色の変化があり、素朴でありながら味わい深い外観を形づくっている。

小規模ながらも細部にまで意匠が行き届いた誠之堂は、

近代日本を代表する実業家の思想と人柄を静かに伝える建築と言えるだろう。 

白雉和京(しらきじ わきょう)

建築学生/建築学科2回生

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