都市の隙間に立ち上がる実験住宅

建築概要

所在地…東京都板橋区坂下

設計…塚本由晴、貝島桃代、竹内昌義

竣工年…1995年

構造…1階RC造、2・3階鉄骨ブレース構造

掲載雑誌・号数…住宅建築 1996-10

面積

敷地面積…189.31㎡

建築面積…123.29㎡

延床面積…293.92㎡

地域地区…準工業地域、近隣商業地域、第二種・第三種高度

都市の混在エリア。

準工業地域と近隣商業地域が交差する場所。

住宅だけでなく、事務所、工場、小店舗が入り混じるこの文脈は、

純粋な住宅地とは異なる緊張感を持つ。

この建築は、その環境を素直に受け止める。

1階には駐車場と貸事務所。

その上に7戸のワンルーム。

つまり、都市の経済活動と居住を重ね合わせた断面構成である。

特筆すべきは南側に隣接する公園の存在だ。

都市において、隣地が“空地”であることは稀少である。

本来なら、この公園との関係性が建築の核になるはずだ。

光、視線、抜け、開放感。

だが外形を見ると、

道路斜線制限に従い、壁面は斜めに切り取られている。

西側住戸はメゾネット。

これは法規への応答だろう。

高さを確保するための断面操作。

合理的だ。

しかし、内部空間を見たとき、

そこに“攻め”は感じられない。

メゾネット住戸。

下階に水回りを集約し、

上階は一室のみの居室。

ロフトも存在する。

だが、そのロフトは

空間的必然性を持っているようには見えない。

メゾネットである意味。

上下に分けたことで生まれる生活の豊かさ。

視線の抜け、気配のずれ、段差の楽しさ。

それらが十分に展開されていない印象を受ける。

もし上階を大胆に分節し、

スタディスペースや半外部的な場所、

公園へ向けたフレームのような窓を設けていたなら。

あるいは吹き抜けを介して

南の光を内部深くまで導いていたなら。

そう考えると、

このメゾネットはやや消極的に映る。

ロフトも“ある”だけ。

取ってつけたような増設的空間。

外形は都市法規に対する明確な応答であり、

構造も1階RC造、上階鉄骨ブレースという合理的構成。

しかし内部は、

その挑戦性に比して静かすぎる。

もちろん、賃貸形式上、

過度な個性はリスクになる。

だが、同時に思う。

もっと尖らせることもできたのではないか、と。

南に公園という“借景”があるのに、

それを内部空間へ強く引き込む仕掛けが弱い。

結果として、

外部環境のポテンシャルと

内部空間の体験が一致していない。

都市型アパートメントとしては成立している。

だが、記憶に残る空間かと言われれば、疑問が残る。

法規制への応答としての外形。

経済合理性としての住戸割り。

それらは十分理解できる。

しかし建築は、

条件を守るだけでは終わらない。

条件を超えて、

生活に驚きや発見を与えてこそ、

都市に刻まれる。

この建築は“実験”の匂いを持ちながら、

内部空間においては慎重に着地している。

白雉和京(しらきじ わきょう)

建築学生/建築学科2回生

https://www.instagram.com/sirakiji_wakyo_designs