十字の平面が導く光と自然

香川県高松市の高台、栗林公園の背後に位置する「峰山の家」は、静かな自然環境とアトリエ的な生活空間を巧みに融合させた住宅である。

陶芸家の妻と高校教諭の夫という二人の生活に合わせて設計されたこの平屋建は、建築として「暮らしの場」と「創作の場」をひとつの空間に落とし込むことを目指している。

建築概要

所在地:香川県高松市

設計:戸塚元雄建築設計事務所

竣工年:1994年

構造:木造平屋建

掲載:住宅建築 1996-7

面積

敷地面積:517㎡

建築面積:154.32㎡

延床面積:151.61㎡

地域地区:第一種住居専用地域

土地の特性を読む

峰山は標高約200mの高台に位置し、中心市街からは離れているため、静寂な環境が保たれている。

敷地周囲は豊かな緑に囲まれ、季節の変化や日の移ろいを肌で感じることができる。

自然の豊かさと、都市の喧騒から距離を置いた立地は、住まい手の創作活動や静かな暮らしに最適である。

平面図から読み解く

この住宅の特徴は十字形の平面にある。

アプローチから広間や工房の様子が視覚的に見える設計となっており、住まい手が出入りするたびに光や風、季節の移ろいを自然に取り込むことができる。

広間と工房は、日常生活と創作活動の拠点として明確に分けられているが、互いの存在を感じる距離感が心地よい。

ひとつ気になるのは、東側寝室付近にトイレが1箇所しかない点だ。

冬の早朝や将来の生活の便宜を考えると、もう一箇所トイレがあると安心感が増すだろう。こうした小さな配慮も、住まい手の暮らしに直結する重要な設計ポイントである。

断面図から読み解く

南側に設けられた大きな窓は、この住宅の光計画の肝である。

窓上には約1mの庇を配置することで、直射日光を床に直接落とさず、柔らかい光だけを室内に取り込む工夫がなされている。

建築写真で見ると、この光の扱いが非常に魅力的に映り、十字形の平面との相乗効果で室内空間に奥行きと心地よさを生んでいる。

この建築の核心

戸塚元雄建築設計事務所は、創作活動と日常生活を調和させる住宅を目指している。

十字形の平面は、生活動線と光の取り込みを両立させ、住まい手に自然の変化を体感させる工夫として機能している。

また、空間の切り分け方も柔軟で、創作の場と居住の場が適度な距離を保ちながらも繋がる。

この住宅の核心は、光・風・自然との対話を日常に落とし込むことにある。

十字形の平面が導く視線と光の流れは、住まい手の感覚を豊かにし、平屋建でありながら奥行きのある空間体験を提供するのだ。

白雉和京(しらきじ わきょう)

建築学生/建築学科2回生

https://www.instagram.com/sirakiji_wakyo_designs