ー武蔵野の緑と暮らすー
都市住宅でありながら、自然との距離を大切にした住宅設計は、多くの建築学生にとって学ぶべきポイントが詰まっている。
東京都国分寺市日吉町に建つ「Fの家」は、限られた敷地の中で家族の生活を豊かにし、同時に緑を取り込む計画が随所に光る住宅である。
建築概要
• 所在地:東京都国分寺市日吉町
• 設計:福島勲
• 竣工年:1992年
• 構造:木造2階建
• 掲載:住宅建築 1996-7
面積
• 敷地面積:120.5㎡
• 建築面積:50.3㎡
• 延床面積:95.8㎡
• 地域地区:第一種住居専用地域、第一種高度地区
土地の特性を読む
都心に近い立地でありながら、武蔵野の地形や緑を濃く残す住宅地である。
周辺には屋敷林や公園が点在し、街並みは落ち着いている。
こうした自然環境を、限られた都市住宅の敷地の中でどのように取り込むかが、設計の大きなテーマとなった。
平面図から読み解く
まず目を引くのは、圧倒的な植栽計画である。
敷地内には約50株もの広葉樹が植えられ、四季折々の移ろいを住宅内外で楽しめるようになっている。
家族構成は祖母・夫婦・子供の4人。家族の生活リズムや親族の来訪に対応しやすいよう、2階に寝室をまとめ、1階に生活空間と客間を集中させている。
玄関へ向かうアプローチでは、樹々を愛でながら進むことができ、視覚的にも心地よい空間体験を生む。
玄関を入ると奥行きのある広間が現れ、家族の団欒や親族との交流、庭を眺めながらの穏やかな時間が自然と流れるよう計画されている。
炊事回りを1箇所にまとめている点も、親族や来客が多い生活に配慮した工夫だと推測できる。
この建築の核心
福島勲は都市住宅でありながら、自然との関係性と家族の暮らしやすさを両立させることに力を注いでいる。
限られた敷地でこれほど多くの植栽を取り込み、季節の変化を住まい手に感じさせる設計は、都市住宅の理想形の一つと言える。
さらに、平面計画は生活のプライバシーと来客対応を明確に分けており、都市住宅ならではの課題に丁寧に応えている。
住まい手が自然とともに暮らす時間を最大化しつつ、都市生活に必要な機能を整える
この住宅の核心は、まさに自然との調和と暮らしの快適さを両立させる建築の姿勢にある。
白雉和京(しらきじ わきょう)
建築学生/建築学科2回生