ー丸柱が支える大家族の暮らしー
住宅の設計において、家族構成や暮らし方は空間の形を決める大きな要素だ。
「佐伯城」は、秩父の山間に建つ10人家族の住宅でありながら、プライベート空間の最小化と、吹き抜けを多用した大胆な設計が特徴的な作品である。
建築概要
• 所在地:埼玉県秩父郡皆野町
• 家族構成:10人家族
• 設計:桑原建築設計室
• 竣工年:1993年
• 構造:木造地下1階地上2階建
• 掲載:住宅建築1996-7
面積
• 敷地面積:471.24㎡
• 建築面積:129.58㎡
• 延床面積:233.8㎡
• 地域地区:無指定地域
土地の特性を読む
秩父山系に囲まれた盆地的な地形で、起伏があり、周囲は森林率が高い。
四季の移ろいを肌で感じられる自然豊かな環境であり、住宅地としても落ち着いた地域だ。
この地形を活かし、吹き抜けや大空間を大胆に取り入れた設計が可能になったのだろう。
平面図から読み解く
まず目を引くのは、10人家族でありながら部屋数が極端に少ないことだ。
平面図の中には吹き抜け空間が多く、個々のプライベートは最小限に抑えられている。
これは、設計者と施主が「家族全体のつながり」を優先した結果であり、物理的な個室を減らすことで、生活の動線や交流を最大化していると考えられる。
子供室が2部屋設けられているのは、男女別で成長に合わせて分けられるよう工夫されていると考えられる。
しかし、それ以外のプライベート空間はほとんどなく、子供が成長した後の空間の柔軟性や独立性には疑問が残る。
この住宅の最大のテーマは「プライベートの在り方」にあると言える。
断面図から読み解く
吹き抜けが多い分、室温の管理や換気に課題があるのではないかと感じる。
窓の数も少なく、夏の暑さや冬の冷え込みへの対応はどうしているのか、空調設計の工夫が気になるところだ。
建築としては、開放的でダイナミックな空間を実現している一方、住み心地という点では賛否が分かれる設計である。
この建築の核心
「佐伯城」は、家族の快適性よりも施主の要望を貫く設計思想が強く表れている。
丸柱7本が住宅を支え、大家族を一つの空間にまとめる大胆さは、建築として非常に魅力的だ。
しかし、子供たちの成長や生活変化に対して柔軟に対応できるかという点では課題も残る。
設計者として学ぶべき点は、施主の要望を尊重することと、住む人全員の将来を見据えた空間設計をどう両立させるかである。
この住宅は、単なる形の面白さだけではなく、家族構成・生活哲学・空間の使い方まで含めて考え抜かれた住宅として、建築学生にとって考察の深い題材だ。
白雉和京(しらきじ わきょう)
建築学生/建築学科2回生