ー世代を繋ぐー
家族が3世代で暮らす住宅は、単に居住空間を分けるだけでは成立しません。
東京都練馬区大泉学園町に建つ「大泉の家」は、家族の関係性、日常のリズム、季節の光や風までを空間に取り込むことに成功した住宅です。
建築概要
• 所在…東京都練馬区大泉学園町
• 家族構成…3世帯6人家族
• 設計…シティ環境建築設計
• 竣工年…1995年
• 構造…木造2階建+ロフト
• 掲載雑誌・号数…住宅建築 253号 特集 住み継ぐ記録 住まい改修の方法-16題、1996-5
面積
敷地面積…372.61㎡
建築面積…89.94㎡
延床面積…156.34㎡
地域地区…第一種住居専用地域
土地の特性を読む
敷地は南北に細長く、日当たり・風通しに恵まれた土地。元は農園地でしたが、駅の開通とともに住宅地へと変化しました。
建物は土地の特徴を最大限に活かす形で配置され、南北の視線や風の通り道が自然に設計されています。
周囲の住宅との距離感も考慮され、敷地の奥行きや向きを活かした空間配置は、3世代住宅特有の複雑さをうまくまとめています。
平面図から読み解く
平面図を見ると、南側道路側に独立した和室が設けられていることが分かります。
和室へのこだわりは日本の住宅文化を意識したものであり、客間や家族の静かな時間を受け止める場として機能しています。
2階にはそれぞれの居室と小規模なミニキッチンを配置。三世代が同居する住宅において、個々の生活リズムを尊重する設計です。
水回りを東側にまとめ、居室は西側(道路側)に寄せる配置も、採光や風通しを考慮した合理的なプラン。
そして何より核心となるのが、板の間と茶の間の間に設けられた土間。
一見すると単純な通路のようですが、この土間が住宅全体の空間を柔軟に接続し、各世代が程よい距離を保ちながら暮らせる「緩衝帯」の役割を果たしています。
断面図から読み解く
断面を見ると、屋根が半アーチ状に設計されているのが特徴的です。
片流れ屋根の直線的な印象ではなく、柔らかさを与え、日本的な穏やかさを演出。屋根の隙間を活かしてロフトを設けるなど、空間の有効活用にも抜かりがありません。
階段で北と南の空間を分断していることも興味深い点です。南側は息子や母の居住スペースと考えられ、娘家族との間に適切な距離を作ることで、角を立てずに空間を分ける工夫がされています。
土間の上を吹き抜けにすることで、夏や冬の温熱環境に議論の余地はありますが、写真で見る限り、空間の魅力と生活体験を優先した結果としての合理的選択と言えるでしょう。
この建築の核心
「大泉の家」は、単なる合理性だけでは語れません。
• 光と風の通り道を丁寧に設計
• 世代間の距離感を空間でコントロール
• 土間やロフトで生活に柔軟性を持たせる
これらの要素が統合され、家族の一日一日を穏やかにする住宅となっています。
建築は単に形を作ることではなく、人の生活に寄り添い、時間の流れを包み込むこと。
大泉の家は、まさにその本質を体現した名建築だと言えるでしょう。
白雉和京(しらきじ わきょう)
建築学生/建築学科2回生