ー光と空間が語るー
建築家を志す者にとって、出会いとは時に運命的であると思う。
私が初めて竹原義二という名前を知ったのは、大学3年生の直前。関西では誰もが知る巨匠の名ですが、正直言えば、私はその存在を知らなかったのです。
インターン先の社長に勧められたのがきっかけでした。「竹原義二の住宅建築」という書籍を手にした瞬間、ページをめくる手が止まらなくなったのを覚えています。その中で特に心を奪われたのが 「101番目の家」 でした。
建築概要
• 所在地:大阪府豊中市
• 構造:地下1階・地上2階
• 延床面積:122.74㎡
• 建築面積:64.57㎡
• 敷地面積:164.85㎡
• 掲載:竹原義二「住宅建築」
光が描く空間 ― 写真から伝わる物語
この住宅写真を初めて目にした時、思わず息を飲みました。
木と光とコンクリートの組み合わせが、静かな美しさを持ちながらも、どこか劇場的な緊張感を孕んでいる。
「抜け」という表現がありますが、この家のそれは単なる視覚的広がりではありません。光の流れが空間の拡がりを作り、見る者の視線を意図的に導いています。
天井と天井の間のスキマ、光の差し込みのズレ。単に天井を分けただけではなく、高さや光の量まで変えて配置されています。
その微妙な差異が、空間の中に 静謐な劇場性 を生み出し、住む人の心に小さな高揚感を呼び覚ますのです。
平面図から読み解く― 流れと生活のリズム
図面を見た瞬間、心が躍りました。
水回りを西側にまとめ、居室は南北に分かれた構成は、光と時間の流れを意識した計画です。朝の光、昼の光、夕方の光。それぞれが空間の表情を変え、住む人の行動や心の動きに合わせて自然に導かれる設計になっています。
また、居住空間を緩やかに分節することで、日常の動線が自然に整えられています。単なる効率性ではなく、「時間の流れ」を設計の一部として取り込む手法は、竹原義二ならではの感性です。
断面図から読み解く― 光と高さの演出
断面図は特に圧巻でした。
片側の建物の高さを少しずつ変化させ、もう一方の建物に傾斜させることで、天光からの光を巧みに導いています。
天井の高さや傾斜、窓の配置が重なり合うことで、単なる居住空間ではなく 光の演出空間 が生まれているのです。
この意匠的な光の取り込みは、まるで時間の経過を建物そのもので感じさせる仕掛けのようで、日常生活を特別な体験に変えてしまいます。
建築家としての学び― 空間の深さ
「101番目の家」を眺めていると、建築とは 光と素材、そして時間との対話である ということを改めて感じます。
• 天井の高さやスキマで光をコントロールする
• 視線の動きに合わせて空間を段階的に変化させる
• 平面計画で日常のリズムを整え、断面で光と空間を演出する
竹原義二はこれらの要素を一つの住宅で統合し、住むこと自体を体験に変えているのです。
まとめ― 光がつなぐ日常と建築
「101番目の家」は、単なる住宅ではなく、光と時間を通じて日常を演出する舞台のような建築です。
建築家を目指す者にとって、この住宅は 空間の奥行き、光の演出、そして日常の物語を読み解く学びの場 になります。
初めて竹原義二に出会った瞬間、私は建築の世界に深く引き込まれ、これからの自分の道を決定づける経験を得ました。
光と素材が語るこの住宅の存在感は、これからも私の建築観に強く影響を与え続けるでしょう。
白雉和京(しらきじ わきょう)
建築学生/建築学科2回生